EA徒然草1 はじめに

EA(Enterprise Architecture)が忘れ去られて久しい。

EAは一言でいうと、「全体最適の観点による業務とシステムに関する最適化計画」で、「そのためのフレームワークを整備・体系化したもの」である。

もともとの起源は、1987年に「IBM System Journal」誌に掲載された「ザックマン・フレームワーク」で、ザックマンはこのモデルを評して「企業を記述する周期律表」と言っている。その後、米国連邦政府フレームワークFEAFや、民間標準化団体のTOGAF、米国国防総省のDODAFなど様々なフレームワークに発展した。

21世紀になり、IBMが全体最適化のコンサル手法として、日本の官庁に売り込んできた。日本政府は電子政府の調達プロセス改善のために2002年秋から採用、2004年に推進者として各府省にCIO補佐官を設置、その後、新規の情報システム化案件に対しEA策定が進められた。

ここで、大きな失敗があったのである。EA策定のドキュメントは、現場が現状課題を自ら自覚するための重要プロセスなのに、コンサル会社に丸投げ、その結果、完成したシステムは、業務プロセスを改善せず、単に紙の帳票類を画面化しただけなので、却って煩雑化し、ほとんど使われないなどなど・・腹が立つほど問題と誤解が多いので省略するが、その責任がEAであるかのごとく論評され、忘れられる結果となった。そして電子政府は莫大なお金をかけながら遅々として進まず、コロナの給付金騒動で、やっと国民全体が「電子政府は全くできてない!」と自覚するようになったのである。20年にわたる人材と税金の損失であった(泣)。

しかし、やっとデジタル庁ができた!小泉総理の時代、総務省と経済産業省のIT 部門を統合し、情報省(?)を設立しようという話があったが、当然、頑強な抵抗にあい頓挫した。(総務省ではICT、経済産業省ではITとそもそも用語からして違い、ベンダーとしては使い分けせざるを得ないのである。)それを、コロナ騒動があったとはいえ、設立されたのは感無量である(感涙!)

弊社はもともと「EAリサーチ」という社名で、EAの普及促進を目指して設立する予定であったが、諸般の事情で「アコール」という社名になった。おこがましい話であるが、個人的には唯一生き残ったEAエヴァンゲリスト(?)だと自負しており、EA研修もいつでもスタートできるよう準備している。

さて、DXが標榜されるようになり、様々な課題も出てきている。DX時代にこそ、EAが再評価され、活用されるべきと考えている。「EA徒然草」では、電子政府やEA推進に関する裏話や体験談などを踏まえ、EAの必要性や効果について語っていきたい。お付き合いいただければ幸いである。

2023年1月10日記