EA徒然草2 FW

EAと同様に、FW(フレームワーク)という用語も最近見かけない気がする。

EAは「最適化計画のためのFW(フレームワーク)を整備・体系化したもの」であるが、元祖ザックマンは「企業を記述する周期律表」を策定しただけで、具体的なFWを定義しなかったので、さまざまなFWが生まれてきた。米国連邦政府フレームワークFEAFや、民間標準化団体のTOGAF、米国国防総省のDODAFなどがある。今後紹介していきたいが、日本の官庁では、独自にITアソシエート協議会が策定した4階層モデルが標準になっている。

4階層モデルは、IT資産をBA (Business Architecture )、DA( Data Architecture)、AA(Applications Architecture)、TA(Technology Architecture)の4階層に分け、それらに対応する参照モデルと、プリンシプル、スタンダーズ、移行計画などで構成される。例えば、LINEで考えると、TAがスマホ本体とネットワーク、AAがLINEアプリ、DAが流れているメッセージや写真、動画、BAはテーマやイベントと置き換えるとわかりやすい。トラブルがあったときなどに、どの階層の話か整理することで、原因究明と共通認識が進むはずである。

官庁EAでは、この「4階層に整理して考えましょう」という話が、その可視化のために膨大なドキュメントを作成することに誤解されてしまった。目的はドキュメント化ではなく、整理プロセスを通して現場の課題の掘り下げと共通認識化をすることなのに、ドキュメント(成果物)作成が目的になってしまったのである。現場の方々がやって意味のあるプロセスが、コンサル会社に丸投げされ、莫大なEA策定費用を生んだ。本末転倒である。なお、自治体では、現場主導で進め、それなりの効果を上げている例もある。

ただ、ドキュメント化しておくのが役に立つものもある。TAの参照モデルであるTRM(Technical Reference Model)である。各部門が勝手なIT調達をされると、連携やメンテ、セキュリティ面などでリスクの発生やコストアップを生むので、参照モデル標準内で調達させることで統制(ガバナンス)を進めようということである。TRMは、中堅の民間企業にとくに効果があるので、何度かお手伝いさせていただいたし、問い合わせも多かった。逆に部門独立型の巨大企業だと調達統制は現場の反発を生んだりして、進まないようである。まあ、あまり大上段に構えず、使えるものから使っていこうというのは、民間の知恵だと思う。

 

2023年1月12日記